
実家をたたむのに近い形になり、僕はこの石を自分の仕事場に持ってきた。この石が自分のものになる、それは悪い気はしなかった。別に誰も所有権を主張していたわけではなかったが、自分のものと考えるとそれは喜ばしい気がした。オフィスの引っ越しをする際、それはなんの価値もない重いだけの邪魔者に思えた。2ヶ月前、それがなかったとき、僕は大変なことをしてしまったと思った。その石がなければ、あの幼稚園の時の楽しい帰りの夜と今の僕をつなぐものがなくなってしまう。どれだけ記憶に残っていてもその石の詳細は思い出せない。あの石の色、形、重み、肌触りが永遠に私の手からすり抜けてしまう。
その石が今日見つかった。雑多に置かれた段ボールの中に入っていた。多分これを僕は自宅に持っていくだろう。妻が捨てさえしなければ息子にこれは大事な石なんだよと教えてあげるだろう。大きくなったら君にあげるよ。この石の意味を息子はいつかわかるときがくるだろうか。それまでこの石は息子の近くに居続けることができるだろうか。
この石の名前が知りたいと思い、ネットを探した。下の写真は虎目石という石である。写真で見ると右のものは黄色の色目が違うが、色にはかなり幅があるようだ。虎目石だといいな。そういえば、「へいしさん」は確かに、これは珍しい石でね、といった。とらめいし、と言ったような記憶が芽生えてきた、ともかく、子供にもわかるちょっと素敵な名前だったのである。

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