2013年8月7日水曜日

8月6日

 何度も、何度も、何度も、というフレーズが繰り返している。頭の中では中島美嘉が歌っているが、本当はそうではないはずだ。

 いつもの白と褪せたオレンジ色の鉄の機械に乗って深い緑の中を通り抜けて懐かしい街へ向かう。You gotta keep people guessing and wondering. 夕方降っていた雨は戻りの時には鮮やかなみかん色の情景に変わっていたはずだ。

 経を読んでいた。何度も繰り返すフレーズがラップに聞こえてきた。Shirley Ho, go crack oak dough. 配列の悪い古い黒いのと同じ型式を買うのが嫌だったので大きい銀のノート型にしたのだが、そうするとお気に入りの皮のバックパックに入らなくなり新しいショルダーを購入した。それがどうも馴染まない。重い、金具が肩に当たる、うまく背に固定できない。出発前にそんなことを考えていた。どちらもジッパーのついたポケットの中に印鑑3つと朱肉と3つの鍵を入れていた。

 父の病状を聞く。眼鏡をかけた医師はもごもごとした話し方をする気の良さそうな人だ。1年前と変わりない。ただ、身体能力も認知能力も1年なりに落ちてきている。倒れたと聞いたのでそのことで呼ばれたと思ったのですが1年毎の面談ですか。8月は夏休みでいろいろな人が動くので都合がいい時期かと思って。倒れたということを医師は重視していないみたいなのだ。MRをしたが(確かそう聞こえた)どこにも異常はない。予防法もない。すべてなすがままに。神の御心のままに。

 父と昼食するには雨足が速い。書類をもらいに聖十字病院にいく。電話をかけ、13時の予約を昼休み前に変更してもらう。丁寧な女性の声で大丈夫ですよ、と。

 藍色のアスファルトに白い線画のように雨が筆を重ねる。右に降りる道は確か子どもの頃、家族のドライブでよく通った道だ。もちろん、この道は何度も、何度も通った。2年前に。

 病院で書類をもらい、中を一周させてもらう。感慨はない。初めてきたのは夏だったなぁ。高い空の駐車場から大きな粒の玉砂利踏んで。

 思い出深いうどん屋で昼食を取る。作業員たちや家族連れで混んでいる。ぶっかけうどん。野菜かき揚げ。まいたけの天麩羅(串)。しかし、串という漢字はふざけた漢字だな。外国人が見たら笑うだろうな。カボチャの天麩羅。蓮根の天麩羅。ピーマンの天麩羅。さつまいもの天麩羅。うなたま丼(小)。いいんだ、今日は好きなだけ食べようと思ってたし。朝、そんなに食べてないから。しかし、なんで食べることで記憶に留めようとするのだろう。父も食は細くないって言ってたな。遺伝だな。それだけは大丈夫ですね、僕は父の顔を見た後、医者に愛想笑いを向けた。

 夕べあんまり寝てなかったので気がついたのはもう鶴橋だった。夕闇迫る空は晴れ渡っていた。美しい川をあまり見ることができなかったのは残念だった。

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