2013年12月10日火曜日

フリルちゃん

 うちにはバイオ君とプリンちゃん以外にもう一匹ペットがいる。それがフリルちゃんだ。フリルちゃんは家族が買ってきたベタで私は最初興味がなかった。まあ、買ってきたのは「魚が飼いたいな」と私がつぶやいたことがきっかけではあったのだが。私の頭の中には、仕事場の接客用ソファの前の小さなテーブルの上に、大きめで低い、いびつな感じのガラスの水槽の中に思いっきり水草や藻類をいれて薄緑にした中にメダカにちょっと色をつけたような化粧っ気のない素朴な奴が1、2匹泳いでいる、というイメージであった。
 ところが、知ってか知らずか、家族が買ってきたのはベタ。真っ青で長いひらひらのついた、女でいえばラテンダンサーのような奴である。それが金魚鉢を1/4に縮小したようなガラス瓶に押し込められている。ううん、ちょっと違うなぁ、と返事をしたきり、このラテン系ベタちゃんは我が家の唯一の生きているペットになったのである。
 その後、ひらひらしているということでフリルちゃんという抑言法とでもいえるようなかわいらしめの名前を授かったわけだが、実はこのフリルちゃん、2代目である。1代目は我が家が和歌山で夏のバカンスを楽しんでいる間に自宅でひとり暑さのためにご逝去なされたのである。それでも同じ魚を買ってきて、また同じ名前をつけるといったセンスはいかなるものか、などとは考えていたのであるが。
 そういったことで、この魚にはあまり興味を持たずに日々を過ごしていたのだがある日、この子が思いのほか頭がいいことに気がついた。私が横を通るときふと見ると、こちらをじっと見ている。水槽に顔を寄せると向こうもすっと寄ってくる。心なしかしっぽを振っている。試しに指を出してみると指のところに顔をくっつけてくる。高い声で「フリルちゃーん」と呼んでみると、ちっちゃな胸びれをこれでもかといわんばかりに一生懸命動かしているのである。あーこれはちょっとかわいいなと思った。
 家人にそれをいうと、前のは餌をやっても飛んだりしなかった、前のは老人で今度のは若いんじゃないかと思うという。そっか、ともかくこれだけ愛想を振りまいてくれる若い子だとかわいがりがいもある。いや、まあ、化粧っ気はあるものの、魚でキレイな方はオスだ、というのは知識としてはわかっているのだが。指を動かすと指についてくるようになり、目が合うと愛想を振りまくのでそれ以外の時は暇で仕方ないんだろう。私は餌を一回もやったことがないのだが、餌を欲しくて寄ってくるわけではないように思えるのである。
 今日、水槽の水が少ないなと思って上からのぞき込むと向こうもこちらを見ている。名前を呼んでやると全身でふりふりしている。何か違う感覚。そうか、今まではガラス越しに見ていたけど、今度は水面越しで距離感が近いのである。
 そうやって交流を深めているわけだが、フリルちゃんと私がもっと近づくとどうなるのか。もしかして、彼女(彼)は水面から飛び出してきたりするのか。一緒に本を読んだり、テレビを見たりするようになるのか。うーん、魚と人間だとやっぱり現時点が限界だろうなぁ...
 

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