2014年2月13日木曜日

ゆめ 24

 次には何食べようか。ここは田舎(ひな)だから定番的な寿司以外にないしなぁ。ガスエビとか、珍しいものはないんだよなぁ。壁にはよくあるポスターが貼られていてebi (shrimp) とか書かれている。さっきは、赤身を頼んだ。あぁ、同じもの頼んだなぁと思ったから最初は中トロでも頼んだんだろう。赤身は鰹のように皮がついていてしかも巨人の拳ほどある大きな塊で、右下から左上に向かって遠心的に扇を描いている。そう、僕は扉から一番奥のカウンターのコの時の右下の端にストーブを背にして座っている。右隣にはコミヤマがいる。高校の時の同級生だ。土間になっているカウンターの奥にその右手の奥には座敷があるようだが、人の気配はない。
 僕はエビを頼んだ。ボタンエビはここでは高いだろうし、かといって茹でたエビが食べたいわけじゃない。さっき、お手ふきかお茶をもらったときに目を合わせたおばちゃんだ。お店の人にはきちんと対応しておくといいことがあるかもしれない。どうします?エビの種類で悩んでいるときに、別の店員だろう、テーブルの上に3つのショットを置いた。店員のいっていることが要領を得ない。コミヤマの斜め隣の、カウンターの長い方の左端に外国人の男がどっしりと腰をかけた。俺たち2人を見ている。敵意のある表情ではないが、セルロイドの眼鏡をかけて、クルーカットの50代に思われる男性だ。ベージュのナイロンの10cmほど刻みで横方向にスティッチが入っているダウンのジャンパーを着ている。
 ショットにはコーラ様の液体が入っていて泡沫がはじけている。それが3つある。鈍角に3つのグラスが置かれていてその左側のを俺は取った。匂いを嗅ぐ。特にこれといった匂いはない。男がおもむろにグラスを取ったので、お前のはこれだろ、という風にコミヤマに目線を送る。おごる、といっているはずなのだろうが、そのへんがよくわからない。男の顔が変わっている。眼鏡はなく、やや悪い顔色に無精ひげを生やしてVネックのニットのセーターを着ている。あちらを向いている男に対して、コミヤマは What are you guys doing? と、聞いている。へえ、こいつ英語使えるんだ、とおもうとともに、一人しかいないのに、guysはおかしいだろ、と考えている。男はこちらショットをつきだし、俺たち2人に笑顔を送ってくる。グラスに口をつけてみるが、ショットなのにアルコールの味がしない。気の抜けたコーラのようだ。なにか、前に使ったときから残ったミルクのような白い濁りが薄く縦にグラスの中に浮かんでいる。男はいつのまにか隣に座っていた外人の女を首に手を回し、ぐっと引きよせている。
 女は濃い化粧でつやのあるグロスをして年齢はかなり上だろう。髪を金髪に染め短くシャギーにしている。斜め向かいの日本人にそのフェーシャルがいかによいか、ということを話している。その子は美容部員をしているかなにかで、顔は四角く、あごがやや尖っていて目が大きかった。三十代半ばだろうか。

0 件のコメント:

コメントを投稿